20世紀に活躍した近代・現代美術の画家たち
2020/02/02
美術の歴史は大変古く、一万年以上前の旧石器時代のものとみられる絵画が洞窟内などで見つかっているほどです。絵画をはじめとした様々な美術・芸術は、古代から西洋を中心に現代まで発展してきました。目まぐるしい発展と動乱の時代であった20世紀は、たくさんの画家・芸術家によって様々な実験的芸術運動が行われた「モダニスム」の時代でもあり、一言では語れないほど多様化されたものになりました。そんな20世紀美術の代表的な画家たちについて調べてみました。
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20世紀美術の幕開け・フォーヴィスムと表現主義
20世紀美術のはじまりは「フォーヴィスム(野獣派)」であるという意見が主流になっています。1905年パリで開かれた展覧会において、原色を多用した大胆で強烈な色彩で以って乱雑に描き殴ったような表現で描かれた絵画たちを見た批評家が「まるで野獣の檻の中にいるようだ」と評したことから、野獣派と呼ばれるようになったといわれています。ルネサンス以降、西洋美術は現実をありのままにとらえる写実主義を伝統としていました。
フォーヴィスムはこれに対して、画家が心に感じたままの主観的な感覚を重視した、自由な色彩を特徴としています。フォーヴィズムの代表的な画家であるアンリ・マティスは、「色彩の魔術師」と呼ばれており、マティスと親交があったジョルジュ・ルオーもフォーヴィスムの画家として有名です。また、パリのフォーヴィスムの影響を受けて、ドイツでも「ドイツ表現主義」が誕生しました。
フォーヴィスムと同様激しい色彩によって内面の感情を表現するもので、他の国々にも表現主義は広まりました。代表的な画家には、ドイツ表現主義を牽引した画家グループ「青騎士」の創始者であるワシリー・カンディンスキーとフランツ・マルクなどがいます。あの「叫び」で有名なエドヴァルド・ムンクも、表現主義の画家です。フォービスムが鮮烈で明るくのびのびとした雰囲気であるのに対し、ドイツ表現主義は世相を反映した不安の感情を主としています。
あまりにも有名?キュビスムの画家
フォービスムと同じく20世紀初頭に生まれたのがキュビスムです。複数の視点から見たものを一枚の画面に表現しようと試みたもので、見たままを描く印象主義とも、感じたままを描く表現主義・フォーヴィスムとも異なる、非常に理論的な芸術運動でした。キュビスムの発端人は1907年に「アビニヨンの女たち」を描いたパブロ・ピカソで間違いないでしょう。
一方、キュビスムという名前は、ジョルジュ・ブラックの風景画へのコメントに「キューブ(立方体)」という単語が出てきたことに由来します。ピカソとブラックは共同でキュビスムを推し進めていきました。しかし、キュビスムによる対象物の分解が極まってくると、もはや何を描いたのかわかりにくくなってしまい、色彩も失われていきました。
キュビスムに絵画的豊かさを取り戻そうとキュビスム活動を行なった画家に、マルセル・デュシャン、フランセス・ピカビア、ロベール・ドローネーらがいますが、やがてキュビスムの人気は衰えていきました。ちなみにピカソはその生涯でなんども画風を変えて世間を驚かせたことでも知られています。ブラックが大戦のため徴兵されたことで、ピカソの「キュビスムの時代」は終わりを告げました。しかしピカソにとってキュビスムは非常に大きな経験となったらしく、その後の作品にもしばしばキュビスム的な要素がみられています。
細分化するヨーロッパ20世紀美術
激動の20世紀においてヨーロッパ美術もどんどん細分化していきましたが、大元を辿れば表現主義やキュビスムが大きな影響を与えていることが多いです。歴史や世相を反映した様々な芸術運動が行われたり、ジョルジョ・デ・キリコによる「形而上絵画」のような新しい絵画様式が生まれ、それらはやがて「シュルレアリスム」や「抽象絵画」に集約されていきます。
ドイツ表現主義グループ「青騎士」を結成したカンディンスキーや、キュビスムに感銘を受けて抽象への展開を目指したピエト・モンドリアンは、抽象絵画の創始者と考えられています。形而上絵画から強い影響を受けて生まれたのが、非現実的な無意識の世界を描くシュルレアリスムです。
サルバドール・ダリやルネ・マグリットは、デ・キリコから直接の影響を受けて、写実的でありつつ夢の中のように不思議で不条理な絵画を残しました。一方、自動筆記やインクの染み、ピカソやブラックに端を発するコラージュなど、画家の自意識を排した無作為性・偶然性による表現手法をとっていたのが、マックス・エルンストやジョアン・ミロです。シュルレアリスムは、これら二つの画風に大まかに分かれています。
そしてこれらの歴史の潮流からは外れながらも、20世紀ヨーロッパの画家を語る上で外せないのがフランスのバルテュスです。20世紀で最も優れた人物画家のひとりとされ、ピカソからは「20世紀最後の巨匠」と評されています。
現代美術を牽引?アメリカ20世紀美術の画家
もともとリアリスム(写実主義)が主流であったアメリカ・ニューヨークですが、第二次世界大戦を受けて抽象絵画をはじめとした様々なジャンルの前衛芸術家たちがアメリカへと亡命してきたことで、アメリカのモダニスムは花開きました。彼らから学んだヨーロッパ美術から派生し、アメリカの風土や歴史と合わさって確立されたアメリカ美術の中で、初めて世界的に注目を集めた芸術運動が「抽象表現主義」です。
これにより美術の中心はパリからニューヨークへと移りました。抽象表現主義はイーゼルに収まらない巨大なキャンバスを特徴としています。画家たちにとってキャンバスは創作の場であり、絵画はその痕跡でした。アメリカ美術史上最も重要な画家の一人とされるジャクソン・ポロックに代表される「アクション・ペインティング」は抽象表現主義の一ジャンルで、完成した絵ではなくその創作過程こそが表現であるとするものです。
ポロックは床の上の巨大キャンパスの上で自由にペンキを撥ねさせて動き回りました。一方で、ヨーロッパの様々な芸術運動や自国の一大ムーブメントとなった抽象表現主義にも影響されず、伝統的な具象絵画やリアリスムを貫いた画家もいます。アメリカン・リアリスムを代表するアンドリュー・ワイエスや、アメリカならではの光景を描く具象画家エドワード・ホッパーは、アメリカの国民的画家といえるでしょう。
20世紀の日本美術・日本画家
ヨーロッパから遠く離れた日本ですが、黒船来航を機に日本は西洋の芸術を知り、西洋諸国も日本の芸術を知ったことで、互いに影響を与えあいました。日本の工芸品、特に浮世絵に衝撃を受けたヨーロッパではジャポニスム(日本趣味)がブームとなり、モダニスムが生まれるのに大きな影響を与えます。一方、西洋絵画を学ぶ日本人画家が増えた中、外来の西洋画に対して、日本の伝統的な絵画を指す「日本画」という概念が誕生しました。
西洋画の要素を取り入れることで日本画の発展に貢献した日本画家のひとりが、京都出身の竹内栖鳳です。彼は1900年にパリ万博で自作が評価を得たことをきっかけにパリ万博を視察、そこからヨーロッパ各地の美術館を巡りました。ヨーロッパ美術の写実的な要素を取り入れた画期的な日本画の数々を残した、近代日本画の先駆者とされています。栖鳳と並んで近代日本画の巨匠とされているのが、水戸出身の横山大観です。
新しい日本画の確立を目指した彼は、はっきりした輪郭線が特徴であったそれまでの日本画に対して、西洋画のように線画を抑えた「朦朧体」という画風を確立しました。しかし大観は国内で猛烈な批判を浴びてしまい、海外に渡りインドやアメリカ・ヨーロッパで展覧会を開きます。そのいずれもが高い評価を受けて日本国内での評価も高まっていきました。彼らは「西の栖鳳・東の大観」として近代日本画壇の双璧とされています。
まとめ
長い美術史の中の一部にすぎないはずの20世紀美術ですが、語りつくせないほど様々な芸術思想・芸術運動が行われていました。紹介した以外にも素晴らしい作品を残した20世紀の画家はたくさんいます。ぜひ、美術館などに足を運んでみてください!